「サービスが悪い」

 アメリカは、世界一の先進国の部分と、非常に発展途上国的な部分を併せ持つ、不思議な国だ。

 平均的アメリカ人の事務処理能力のなさには呆れるものがある。銀行に20ドル札で5000ドル余を預けに行ったところ、窓口の人間は札をまともに数えられない。30分も札束と悪戦苦闘している銀行員をボーっと見ている羽目に陥った。さらに、彼らの書く字の汚さといったら。学生時代、銀行に就職の決まった友人は入社前から書き方ノートを宿題として出されていた。一切改ざんができないよう、タイプしたような文字を書く訓練をさせられている日本の銀行員を見てきた私には、まったく信じられない。

 ほとんど宿敵とでも言うべき、UPSという大手の宅配業者がある。ある日、インタホンとつながっている留守電にUPSから「荷物を届けに来たが、いないからまた明日来る」とのメッセージが入っていた。しかし、玄関の外に貼られた不在者票には、信じられないことにUPSの電話番号も住所も書いていない。一方的に「明日また来る」「3回来て留守だった場合は送り主に戻す」と書いてあるだけ。

 そんなもの、昼間働いてるからいないんであって、何回来られたっているもんか! 怒りながらも仕方ないので「営業所まで取りに行くから連絡先を教えろ」とメッセージを貼り返しておいた。翌日の留守電には、荷物を取りに行く住所と1週間保管する、というメッセージ。相変わらず電話番号は言ってないし、住所は他に何もついでがないような街外れの倉庫街だ。

 運良く、仕事で近くに行くついでのあった私は昼頃営業所に寄った。すると、ナント! 荷物引き取りの営業時間は平日の12時から5時までのみ! もしついでがなければ、会社に行く前に寄ろうと考えただろう。とんだ無駄足を運ぶところだった。昼間働いてる人間に一体どうやって取りに来いというのだ! 郵便局よりサービスの悪い民間宅配業者なんて、あっていいのか?!

 その後、送る時に受取手の電話番号を聞かない、というUPSのシステムのせいで、今度は私宛に送られた荷物が3週間も紛失。この時の荷物はコンピュータ。「何千ドルもする物送るのに電話番号も聞かないとは、どーゆー神経だ?!」と再び怒り心頭。

 その後も、ニューヨークに移ってからも、UPSとはトラブル続き。しかし、悲しいかな、アメリカには他に全米を網羅する安い宅配業者がないのだ。通販などで、どうしても利用せざるを得ない。翌日配達の高級宅配便なら、いろいろあるのだが(_ _;;;...。

(原文:95/11 加筆訂正:98/9)