☆ ラーゲリより愛を込めて

監督:瀬々敬久
出演:二宮和也
   北川景子
   松坂桃李
   桐谷健太

 心揺さぶられる。かと言って、決してお涙頂戴物語ではない。過度に観客の涙を誘うような場面はないところが好印象。

 シベリア抑留の映画といえば、なんと言っても「人間の條件」。シベリア抑留生活の悲惨さ過酷さ(プラス、撮影の過酷さ)がひしひしと伝わってくる。対してこちらは、2時間15分の長い映画の中でも、主題は最後の20分、日本でのシーンに集約されている。ここで原作タイトルの意味が回収される。

 もちろんこの作品でも、シベリア抑留の過酷さ、理不尽さは、十分過ぎるほどに伝わる。せっかく戦争を生き延びたのに、戦争が終わってなお抑留されていること自体があり得ないぐらい理不尽だが、そこに日本人が囚われていると分かっていながら連れ戻してもらえないもどかしさ理不尽さ。手紙のやり取りはできるのに、ソ連にいると分かっているのに、どうして連れ戻せない?! 日本という国はなんと非力なのか・・・。

 約30年前にドラマ化された際、主人公山本幡男を演じた寺尾聰が、2022年の主人公の息子役で出演しているのが感慨深い。

 ところで、戦時中や終戦直後の北川景子がきれい過ぎて、二宮和也にもシーン全体にも釣り合っていないんですケド。一人、浮いているというか・・・。まぁ若い頃の回想シーンは美しくてもいいし、戦後の苦労を重ねて白髪交じりになった姿はそこそこ現実味があったが、引き上げ前後のシーンはもうちょっとくたびれた感じにできなかったものか。いっそもっと庶民的な風貌の人が演じたほうが、二宮和也ともバランスが取れて良かったと思うなぁ。

鑑賞日:2025年11月28日
製作:2022年・日本


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